

土地を相続する際に、悩みどころとなるのが土地の使い道です。土地を放置していると多くのリスクがあるため、できれば有効活用したいところです。ただ、実際に所有者となると、どう活用できるのかわからない、という方もいるかもしれません。
この記事では、土地活用のメリットと具体的な方法、放置したときに発生するリスクを解説しています。土地を相続した方、将来的に相続人となる可能性が高い方は参考にしてみてください。
相続した土地を放置すると多額の費用が発生してしまう!
土地を相続したあと「使い道もないしいったんこのままで……」と放置してしまう方もいるのですが、これは得策とはいえません。
というのも、土地は基本的に“持っているだけで費用やリスクが発生するもの”だからです。具体的にどのような費用がかかるのか見ていきましょう。
固定資産税
1年に一度、課税標準額の1.4%を課税されます。仮に課税標準額3000万円の土地であれば、42万円の税金が土地を所有しているだけでかかります。
都市計画税
固定資産税と同じく1年に一度課税されるのが都市計画税です。都市計画区域内の土地に対し、最大で課税標準額の0.3%が課税されます。
固定資産税と都市計画税は、家が建っている住宅用地であれば、税額を軽減できる特例が適用されます。固定資産税の場合は住宅用地の面積に応じて課税標準額が6分の1または3分の1に、都市計画税は3分の1または3分の2に減額されます。
ただし、家の建っていないただの土地には軽減措置はありません。また、家が建っていても、老朽化が著しく倒壊のなどの恐れがある“特定空き家”に認定されると、固定資産税の軽減は受けられません。
建物の老朽化にともなう近隣からの損害賠償
土地に古家や何らかの設備が建っている場合は、老朽化による倒壊などのリスクもあります。建物の管理・修繕を怠った結果、自然災害などで建物が壊れ、近隣住民や通行人に損害を与えた際には損害賠償請求の対象になることも考えられます。
このように、基本的に家や土地は放置していても良いことはありません。土地にあった方法で活用し、収入源とすることをおすすめします。
土地活用をするメリットは大きく分けて3つ

土地活用は固定資産税や老朽化による損害賠償などの対策になりますが、そのほかにも大きく3つのメリットがあります。それぞれ詳細を確認していきましょう。
大きな収入源になる場合もある
土地は大きな収入源になります。具体的にどの程度の収入が見込めるかは活用方法にもよりますが、うまく運用できれば税金の支払い分を吸収するだけでなく、資産を大きく増やすことも可能です。
ひと口に収益物件といっても、その種類はさまざまです。代表的なマンションやアパートの経営をはじめ、オフィスビルを建てたうえでテナントの募集などもできます。
また、自分で不動産を経営するほかに、借地として貸し出すのも選択肢の一つです。初期費用をかけずに定期的な借地料を得られるため、リスクを抑えて土地を収益化できるメリットがあります。一般的には、借地料は固定資産税の2倍から4倍程度が相場とされています。
収入源として土地を活用する場合、初期費用を用意できるか、維持管理にどの程度手間をかけられるかなどを検討し、自分にあった方法を選びましょう。詳細は後述しますので参考にしてみてください。
もちろん、活用が難しいのであれば早々に売却してお金に換えるのも手でしょう。現金にしてしまえば土地より使い道が増えますし、将来発生する相続でも分割しやすくなります。
節税対策になる
土地活用の意外なメリットが、サラリーマンの節税対策になることです。例えば土地にマンションを建築し、賃貸経営が赤字になった場合、マイナス分を給与所得から差し引いて全体の課税所得を減らすことができます。
なお、節税が可能なのは賃貸経営が赤字の場合のみです。本来の目的は賃貸経営で収入を増やすことですので、節税にこだわって意図的に業績を赤字にするのはおすすめできません。節税はあくまで副次的な効果として考えておきましょう。
ちなみに、土地にマンションやアパートを建てることで、前述の都市計画税と固定資産税の軽減も受けることができます。
相続対策になる
土地に建物を建てることで、将来的に相続が発生した際の相続税対策ができます。具体的にどのような方法で相続税を抑えられるのかを見てみましょう。
建物を建てると相続税評価額が低くなる
例えば、更地の土地と現金の相続財産があるケースでは、現金で建物を建てたほうが相続税は安くなります。これは、現金よりも不動産のほうが、相続税評価額が低くなるためです。
建物の場合、相続税は固定資産税評価額をベースに算出します。そして固定資産税評価額は建築にかかった費用の50%程度であることが多いため、結果的に相続税も50%ほど抑えられることになるのです。
すでに建物がある土地の場合も、賃貸物件として貸し出すことで相続税評価額を下げることができます。賃貸物件の場合、相続税評価額の減少は約30%です。
また、更地に賃貸用の戸建て・マンション・テナントビルなどを建てた場合、土地の相続税評価額が減額されます。賃貸用の建物が建っている土地は“貸家建付地(かしやたてつけち)”と呼ばれ、空室状況などに応じて評価額が減少します。
小規模宅地等の特例で相続税を下げることができる
土地に小規模宅地等の特例が適用される場合、相続税を減らすことができます。小規模宅地等の特例は、相続した土地が被相続人の居住用や事業用、または賃貸物件だった際に利用できる制度です。土地の面積に上限はありますが、相続税評価額を最大80%減少させられます。
土地の分類 | 概要 | 減額できる最大面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
特定居住用宅地等 | 被相続人の住居を親族が相続した場合に適用できる。 | 330平方メートル | 80% |
貸付事業用宅地等 | 被相続人の所有していた賃貸物件を親族が相続した際に適用できる。 | 200平方メートル | 50% |
特定事業用宅地等 | 被相続人が事業を営んでおり、対象の事業と事業用の不動産を親族が相続した場合に適用できる。 | 400平方メートル | 80% |
このように、相続した土地を次世代への相続で譲りたいのであれば、住居や賃貸用物件として活用したほうが、相続税を安く抑えられます。
【目的別】おすすめの土地活用方法

実際に土地活用を検討する場合、具体的にどのような方法が考えられるのでしょうか。土地活用の目的別に、おすすめの方法を紹介します。
初期費用重視
土地を活用して収入を増やしたいけれど、初期費用の投資が難しいと考える方は、事業者への貸し出しや、等価交換による物件の運営が選択肢に入ります。
事業者への土地の貸し出し
量販店やコンビニなど、店舗用の土地を探している業者へ土地を貸すのも選択肢の一つです。所有者は土地を貸すだけですので、建築の初期費用などはかからず、コストを抑えて収入を得ることができます。
建物を建てて貸し出す場合と比較すると収入は低くなりやすいですが、建物の修繕など維持費用が発生しない分、リスクを抑えて収入が得られる方法です。また、大きな道路の近くや繁華街など、住宅用地としての人気が低い立地でも活用を検討できます。
等価交換による物件の運営
等価交換とは、地主と業者が共同で収益物件を保有する運用方法です。地主が土地を、業者が建物を提供し、最終的に出資割合に応じた建物の所有権(持分)を持ちます。建物の建築は業者が行なうため、地主に初期費用はほとんどかかりません。
ただし、初期費用がかからない反面、地主の持分が小さく設定されることが多いため注意が必要です。受け取れる収入の割合にも影響してきますので、業者とは納得がいくまで交渉しましょう。
節税・バランス重視
節税効果と収入を両立させたい場合、アパート・マンション経営がおすすめです。長期的に収入を得ながら、赤字の際は節税もできるバランスの良い方法です。
賃貸物件を経営する場合、まずアパートとマンションのどちらにするか決める必要があります。立地やエリアの需要で考えるのも大切ですが、利回りに影響するコスト面も異なるため、総合的に判断しましょう。賃貸物件の利回りに影響をおよぼす要素として代表的なのは以下の4つの項目です。
項目 | マンション | アパート |
---|---|---|
建物の老朽化による家賃の下落リスク | 低い | 高い |
建築コスト | 高い | 低い |
修繕コスト | 高い | 低い |
ローンの融資期間 | 長い | 短い |
一般的に、アパートは建築コストが安く済む分、建物の寿命が短く老朽化が早く進みます。一方、マンションは建築コストが高くなりますが、建物が長持ちする分家賃の下落リスクも低いといえるでしょう。
また、建物の法定耐用年数にも注意が必要です。法定耐用年数は、ローンの融資期間や物件の売却価格、減価償却できる期間の長さなどを左右します。賃貸用建物の構造別の法定耐用年数は以下のとおりです。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
構造 | 法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
鉄骨造 (骨格材の厚み3ミリ以下) | 19年 |
鉄骨造 (骨格材の厚み3ミリ超4ミリ未満) | 27年 |
鉄骨造 (骨格材の厚み4ミリ以上) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
基本的に、減価償却できる期間やローンの借入期間は、法定耐用年数の範囲が上限です。そのため、法定耐用年数の長さは賃貸物件経営のキャッシュフローに大きく関係します。自分の土地ではどのタイプが最も収入を得られるのか、総合的に考えたうえで判断しましょう。
収益性重視
収益を重視するのであれば、商業施設やテナント経営も視野に入ります。マンションやアパートのように住居を貸し出す場合と比べて賃料が高くなるため、うまく運用できれば大きな収益を見込めます。
また、契約内容の自由度が高く、“売上の〇%”といった具合に変動料金で賃料を設定することも可能です。商業施設やテナントを経営する場合、例えば以下のようなものが例として挙げられます。
コンビニ
場所を選ばず収入を得やすい業種の一つです。小型店舗として出店するコンビニも多いため、比較的小さな土地でもテナント経営が視野に入ります。
ショッピングセンター
ショッピングセンターは、エリアの需要をうまく取り込めれば大きな収益を見込める物件です。ただし、テナントが撤退するとその分収入が減少するため、事前の現実的な収益予測と、エリア需要の綿密な調査が必要でしょう。
飲食店
人通りの多い駅前や学生街などで収入を得やすい業種です。飲食店は店舗の入れ替わりが激しいため、借り手の付きやすい立地かどうか吟味しましょう。
そのほかにも、テナント経営の選択肢は多くあります。自分の土地ではどの業種を対象にすると収入を増やせるのか、じっくり検討したうえで活用方法を決定しましょう。
まとめ
土地は所有しているだけで税金がかかるうえ、建物がある場合は老朽化や倒壊リスクもあるため、土地を相続した場合は何らかの方法で活用することがおすすめです。
土地の活用は、収入を得られるだけではなく、相続税・固定資産税の対策にもなります。収益を重視するのか、節税を重視するのかなどポイント別に整理してみると、ベストな活用方法を見つけやすくなるでしょう。
土地の活用を手間に感じる、経営ノウハウがなくて不安だという場合は売却して一度お金に換えるのも良い方法です。相続してから放置している土地がある場合は、一度使い道を考えてみてはいかがでしょうか。